この記事ではエレベータの制動装置【昇降路頂部やピットへの衝突を防ぐための装置】について解説しています。
▷巻上機・主索・ガイドレール【エレベーターの上昇・下降】
▷かごの上端~昇降路頂部床【頂部隙間】
▷定格速度オーバーのかごを停止させる装置【調速機・過速スイッチ・非常止め装置】
巻上機・主索・ガイドレール【エレベーターの上昇・下降】
トランクション式エレベーターは、鋼製のワイヤーロープ[主索]が巻上機によって駆動し、エレベーターはガイドレールに沿って昇降します。
トランクション式エレベーターには、つり合い重りが設置されるのが特徴です。つり合い重りの上昇に伴い、かごは下降するため、駆動動力が軽減されています。
かごの上端~昇降路頂部床【頂部隙間】
頂部隙間は、平12建告第1423号で定められた例示規定による寸法とするか、同じく同告示により求めた計算値以上とするよう規定されています。
例えば、例示規定による寸法の場合、定格速度90m/minのエレベーターの場合、頂部隙間は1.6m以上とします。
この値は、計算式による場合よりも大きく算定されます。
また、頂部隙間は、かご頂部の機器、直上部の梁などがある場合はその最小距離となるため、定格速度90m/minのエレベーターで800mm程度となることもあります。
一方で保守点検時に人がかごの上にのって点検できるよう頂部安全距離を確保します。
寸法としては1.2mを確保の上、リミットスイッチ[頂部安全距離確保スイッチ]の動作等を考慮し、1.5m程度が確保されます。
定格速度オーバーのかごを停止させる装置【調速機・過速スイッチ・非常止め装置】
頂部隙間等を規定値以上確保できれば、次は制動装置に関する規定が平12建告第1423号第2に規定されています。
エレベーターの制動装置として、調速機が昇降路に設置されています。
調速機は、巻上機等に不具合が発生した場合、過速状態を検知し、かごを安全に停止させる装置を作動させる役目があります。
調速機による制御方法は以下の2段階で規定されています。
一段階目は、定格速度の1.3倍を超えない段階で過速スイッチが機能し、電動機への動力を切る。
二段階目は、定格速度の1.4倍を超えない段階で非常止め装置を作動させ、かごの降下を制止させる。
非常止め装置の中にある次第ぎき非常止め装置は、平均減速度を9.8m/s2以内でかごを減速させるものです。
こうした装置により急な停止による人やかごにかかる衝撃に対する配慮が取られています。
エレベーター付きの建物完成時には、上記の試験項目等を検査し建物の引き渡しが行われます。
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