この記事では、直線定着の長さL2、L3と、仕口で用いる90°折曲げ定着L2hが確保できない場合の定着の取り方について記載しています。
記事を通して、鉄筋の直線定着の長さL2、L3、投影定着長さLa、Lbの違いや、曖昧さも把握できると思います。
- 直線定着の長さL2・L3とフック付き定着の長さL2h・L3h
- 90°折曲げ定着L2hが確保できない場合の投影定着長さLa・Lbの取り方
▶梁主筋の柱への90°折曲げ定着の場合
▶小梁・スラブ上端筋の梁への90°折曲げ定着の場合
なお、定着とは、スラブ筋であれば梁に、梁筋は柱に、壁筋は縦筋は梁に、横筋は柱に、柱筋は基礎に鉄筋を入り込むように配筋することです。
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それでは、内容を説明していきます。
1・直線定着の長さL2・L3とフック付き定着の長さL2h、L3h
まず、定着の定義となる部分です。
直線定着の長さL2は、定着起点から鉄筋先端までの長さです。
これに対してフック付き定着の長さはL2hは、定着起点から鉄筋の折曲げ開始点までの長さとなります。
L2、L2hの数値は建築士試験でも出題されていますが、コンクリートの設計基準強度と鉄筋強度の関係で定められています。
L2、L2hは小梁、スラブの下端筋の定着長さを除いて用いられるため、定着では広く使われる用語です。
L2hには、仕口部の90°折曲げ定着の他に135°、180°に折り曲げる方法もあります。
小梁、スラブの下端筋の直線定着の長さはL3、フック付き定着の場合はL3hとして別途規定されています。
2.90°折曲げ定着でL2hが確保できない場合の投影定着長さLa・Lbの取り方
90°折曲げ定着が用いられる箇所は、梁主筋の柱への定着、小梁上端筋の梁への定着、スラブ上端筋の梁への定着等です。
90°折曲げ定着はこうした仕口内の限られた範囲で行われるため、下図左のようにフック付き鉄筋の定着長さL2h(定着起点から折曲げ開始点までの長さ)を確保することが難しいケースがあります。
その場合の対応は以下のようになります。
梁主筋の柱への90°折曲げ定着の場合
L2hが確保できない場合、下図右のように梁主筋の定着長さは、
定着起点から折曲げた鉄筋先端までの全長でL2を確保する。
余長を8d以上とする。
定着起点から鉄筋外面までの投影定着長さLa(水平投影長さ)を確保する。
の3つを満たすようにします。
Laも、コンクリートの設計基準強度と鉄筋強度の関係で決められた数値のことを示し、鉄筋を水平に投影した場合の長さですので、投影定着長さと呼びます。
定着は、梁上端筋、下端筋とも確保します。
余長はフックの形状により定められています。
上図右は90°折り曲げ定着としたため、余長が8d以上と定められた例となります。
90°フックの場合8d以上、135°フックの場合6d以上、180°フックの場合4d以上と定められています。
L2、L2h、Laの値はコンクリートの設計基準強度Fcと鉄筋強度の関係で定められていました。
以下書籍や公共工事標準仕様書に表で記載されています。
参考書籍
小梁・スラブ上端筋の梁への90°折曲げ定着の場合
次に、小梁・スラブ上端筋が下図左で90°折曲げ定着L2hを確保できない場合は、
上記右La(投影定着長さ)の規定がLbに置き換わることと、
小梁の下端筋の定着長さL3h
の規定が適用されます。
90°折曲げ定着で定着長さL2hが仕口で確保できない場合の条件をまとめると以下のようになります。
- 定着起点から鉄筋先端までの全長でL2以上確保。
- 余長を8d以上とする。(90°折曲げの場合の余長は8d以上と覚える)
- 定着起点から鉄筋外面までの投影定着長さLaを確保する。
Laの数値は原則として柱せいの3/4以上とする。
小梁、スラブ上端筋(片持ちの小梁・スラブを除く)の場合はLbを確保する。
また梁の定着は上端筋と下端筋に適用されます。
長期荷重時には主に梁の下側が引張となりますが、地震時には地震力が左右からかかるため、梁の上下とも引張側になるケースがあるためです。
構造系の設計の仕事につくと、経験の範囲内では、最初は構造図の作成から、小梁やスラブといった2次部材の構造計算から始めると思います。
実際の図面を用いて計算を行いますので、部材に力を及ぼす範囲一つにしても、これまでの座学との違いに気付くことが沢山あります。
規模が大きくなるほど、部材数も多くなり大変なこともありますが、建築のメインの仕事の一つですので挑戦しがいはある仕事だと思います。
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こちらは構造系の記事ですが、インテリア・仕事関連の記事はこちらもご覧ください。